診断:パーキンソン病
- 基本的には臨床診断です。症状で診断します
- 典型的で症状が揃っていれば比較的診断は容易です
- しかし、むしろ症状が揃わず、診断が難しい例の方が多いです
- 動作がゆっくりなる(動作緩慢)のは年齢のせい、表情が少なく元気がない場合は「うつ」と間違われたりします
- 診断基準では、動作が急に遅くなった、年齢の割に鈍いという「動作緩慢」があり、これに安静時振戦(何もしていない時に指や足が震える)か筋肉が固い(関節の動きが固い)があればパーキンソン病を疑います
3大症状
| 動作緩慢 | 振戦(ふるえ) | 固縮/筋強剛 |
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| 動きが鈍い | じっとしている時に震え | 筋肉が固くなる |
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画像診断
正確な診断のためには 画像検査が必須です
| CT/MRI | RI検査(DaTSCAN)(ダットスキャン) | MIBG心筋シンチ(エムアイビージー) |
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| 鑑別診断 | ドパミン細胞の値を確認 | 心臓の自律神経を確認 |
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| 異常なし | 線条体が小さくなる | 心臓の形がわからなくなる |
- 画像検査として通常のCTやMRIは脳梗塞などの鑑別のために必ず撮影しますが、パーキンソン病の診断はできません
- 最近、RI(核医学)検査の進歩で発症早期や典型的でない例でも確実に診断できるようになりました
- DaTSCANは線条体に有るドパミン細胞を見る検査です。正常の方は「ハの字型」に線条体がはっきり写りますが、パーキンソン病やパーキンソン症候群(パーキンソン病と似ている病気の一群)では小さくなっています
- この検査が正常であればパーキンソン病は否定的、異常があればパーキンソン病がある可能性が高くなります
- パーキンソン病の確定診断のために行われるのがMIBG心筋シンチです。この検査は心臓の自律神経の検査です
- 正常では心臓の形がはっきりと見えますが、自律神経が弱っているパーキンソン病では上記図のように心臓の形がわかりません
- このように心臓が写らない場合はほぼパーキンソン病と診断出来ます(心臓の働きは正常です。ご心配なく)
治療:パーキンソン病
パーキンソン病の治療について
- パーキンソン病治療の基本は薬物療法です
- 近年、DAT(デバイス補助療法)が開発され、進行期の治療に使われています
- 最近話題のiPS治療、ワクチン治療、遺伝子治療については期待が大きいですが、まだ一般臨床では使えません(治験、実験段階)
- 治癒はできない(現時点):治療の目的は、症状軽減によって日常生活をしやすくすることです(治療の継続、長期的計画が大切)
- 早期診断・早期治療が原則:早期治療開始で予後が悪くなることはありません
- 昔の本には早く始めると薬が早く効かなくなると書いてありましたが、現在でははやく治療をして始めた方が明らかに予後が良いという結果が出ています。不自由な生活を続けないで済みます
- 治療の目標: 症状を軽くして、良い期間(ハネムーン期)を長くする

パーキンソン病治療薬の種類
薬剤の部を参照ください。
パーキンソン病治療の原則
- 高血圧や糖尿病と同じく長期に服薬を続ける必要がある
- 生命予後(寿命)は普通の人と同じ。いかに症状を減らして快適に生活するかが大切
- 個人・症状によって薬が違う。一種類大量より多剤併用で治療する。作用が違う多くの薬を飲む必要がある
- 本やインターネット、ほかの人の話は一般論。意味がない
- 新しい薬、治療法が出てきている。悲観しないように
- 飲み忘れ,飲み間違いに注意!自己判断で調整しては絶対にダメ!
- 下剤以外はスタッフと必ず相談して!自己判断で調整しては絶対にダメ!
- 副作用:飲み始めと内服変更後が出やすい、慣れてくると少なくなる
- パーキンソン症状を悪化させるお薬があります。相談して下さい
追加
- L-DOPA(Levodopa :レボドパ):
レボドパの登場でパーキンソン病の治療は劇的に変わりました<br>「レボドパはパーキンソン病を進行させる」「早く飲み始めると病気が進む」は迷信です
早期に治療開始した方が予後も良い - タンパク質をとると薬が効かない:
昔の薬はそうでした。今は薬も良くなっています。しっかりタンパク質を食べて運動して筋肉をつけるのが基本
薬剤:パーキンソン病
1. パーキンソン病の薬物療法
- パーキンソン病の薬物治療の目的は症状を軽くして、日常生活を過ごしやすくすることです
- 現在のところ、お薬ではパーキンソン病を完治させることはできませんが、お薬による治療をしっかりと続けることで、症状を改善し、問題なく日常生活を送ることが可能となります
2. パーキンソン病のお薬の種類
- パーキンソン病は脳内のドパミンが低下することが原因で発症します
- このため、パーキンソン病のお薬は脳内のドパミンを増やしたり、ドパミンの働きを助けたりするお薬が主に用いられます
- パーキンソン病のお薬は以下の4つに大きく分類されます
1. ドパミンを増やすお薬(レボドパ製剤)
マドパー、ドパコールL、メネシットなど
2. ドパミンの代わりとなって働くお薬(ドパミンアゴニスト)
内服薬:ロピニロール、プラミペキソールなど<br>貼付剤:ニュープロパッチ、ハルロピテープ
3. ドパミンを減らさないようにするお薬
レボドパの分解を防ぐ:エンタカポン、スタレボ(レボドパとの合剤)、オンジェンティス<br>ドパミンの分解を防ぐ:エフピー、アジレクト、エクフィナなど
3. パーキンソン病のお薬の副作用
- お薬を飲んでいると副作用が出ることがありますが、さまざまな工夫により軽くすることも可能です
- 副作用が出たからといって、自己判断で薬を中止してはいけません!必ず主治医に相談して指示に従ってください
代表的な副作用
- 吐き気・食欲不振
- 立ちくらみ
- 眠気・突然眠くなる
- 衝動が抑えられなくなる
(買い物依存、ギャンブル依存など)(ドパミンアゴニスト) - 幻覚(あるはずの無いものが見える)
- 妄想(事実ではないことを思いこむ)
- 足がむくむ、浮腫
- 口が渇く、尿が出にくくなる(抗コリン薬)
4. パーキンソン病のお薬を飲む上での注意点
1.自分の判断で勝手に薬を中止してはいけません!
- パーキンソン病の薬を勝手に中止すると、まれに高熱・意識障害・筋肉のこわばり・全身のふるえなどの症状が出ることがあります
- 薬の服用を中止したいときは必ず主治医と相談して指示に従ってください
2.お薬の量は自分で調節してはいけません!
- 患者さんが勝手に飲む量を変えてしまうと、予期せぬ副作用などが生じることがあります
- 処方どおりに服用していないと医師は薬の効果を判定することができず、適切な薬の量を決めにくくなります
- 薬の量を調節したい場合は、必ず医師に相談してください
- 下剤(便秘の薬)は便通に合わせて自分で調節することが可能です
3. 他の病院からお薬をもらっている場合は医師・薬剤師に報告しましょう!
- 胃薬、うつ病の薬の中にはパーキンソン病の症状を悪化させるものがあります
- うつ病の薬や鎮痛薬の一部にはパーキンソン病薬と一緒に服用できないお薬があります
- 他の病院でもらっているお薬がある場合は、医師や薬剤師に確認してもらいましょう
- 薬局でお薬をもらう時は、毎回お薬手帳を提出して薬剤師に飲み合わせを確認してもらいましょう
- 市販のお薬やサプリメントを買う時も確認してもらいましょう
4.できるだけ、飲み忘れや飲み間違いがないように注意しましょう!
- パーキンソン病のお薬は、飲み忘れると症状が悪化して動けなくなり、ますます薬が飲めなくなるといった悪循環が起こる可能性があります
- 家族の方にもどのようにお薬を飲むか理解して頂き、困った時はサポートしてもらえるようにしましょう
- 飲み忘れを防ぐためにはお薬カレンダー1日BOXが便利です
- お薬の種類が多い時は、錠剤をまとめて袋にいれてもらえる一包化(いっぽうか)を利用してください
5.お薬について困っていることがあれば、なんでも相談しましょう!
- 錠剤が取り出せない、大きな錠剤が飲み込めない、上を向けないので粉薬がこぼれてしまう、などなどお薬を飲む上で困っていることがある場合は薬剤師に相談してください
- 患者さんの悩みに応じて、処方やお薬の作り方の工夫をすることが出来る場合があります
診断・治療:パーキンソン病以外の神経難病
運動ニューロン疾患/筋萎縮性側索硬化症(ALS)
運動ニューロン疾患/筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは
- 運動ニューロン疾患とは、脳から「動きなさい」という指令を筋肉に伝える神経細胞(運動ニューロン)が進行性に障害される病気です。
- 脳からの指令が届かなくなりますので、全身の筋肉が動きにくくなり、徐々に衰えていく病気です。いくつかの種類がありますが、代表的なものが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)です。 ALSを中心に解説します。
- 疫学:日本におけるALSの患者数は約1万人と推定されています。10万人あたり約10人の有病率です。発症は50〜70歳代に多い傾向があり、男性の方がやや多くなっています
- 原因:約5%が遺伝性と言われ、遺伝子以上が見つかっています。しかし、ほとんどが遺伝は関係ない孤発性ALSです。 酸化ストレス、グルタミン酸過剰などが言われていますが、全てを説明できるものはありません。
- 症状:どの筋肉から発症するかによって異なります。手足の筋力低下(物を持てない、歩きにくい)、言葉を話しにくい、物が飲み込みにくいなどがあります。初期の症状は異なっても、進行すると全身の筋力低下が起こります。呼吸筋の機能低下によって息切れ、呼吸苦などの呼吸不全に至ります。
- 診断:初期にはなかなか診断が難しく、複数の医療機関を受診される方もおられます。血液検査やMRI検査などで特徴的なものはありません。逆に、進行性の筋力低下がありながら、原因となる脊椎の異常などが画像などで見つからないのが特徴です。ALSが疑われる場合は、神経伝導速度検査、筋肉の超音波検査、針筋電図検査などを行います。除外診断としてMRI検査なども行います。
- 治療:根本的な治療法はまだありません。進行を遅らせるための薬剤(リルゾール、エダラボン、ビタミンB12)があります。筋力や日常生活能力の維持にリハビリテーションは有用です。ロボットリハビリテーション HAL(ハル)は歩行機能の維持に有効です(保険適応)。進行すると呼吸補助、嚥下・栄養サポートなどが必要となります。これらの治療により、生活の質を維持し、できるだけ長く快適に過ごすことを目指します。
脊髄小脳変性症(SCD)
- 身体のバランスや動きのリズムなどを担当しているのが小脳です。小脳の神経細胞が徐々に失われることで、歩行時にふらつく、ろれつが回らないなどの症状が出てくる疾患群です。
- 疫学:全国に約3万人の患者がいると推定されています。男女差はありません。
- 原因:遺伝性と「孤発性(非遺伝性)」があります。約7割が孤発性、約3割が遺伝性とされています。遺伝性の場合、9割以上が常染色体有性遺伝で、親が原因遺伝子を持っている場合、子どもには半分の確率で遺伝する可能性があります。原因遺伝子が見つかっているものも多く 、見つかった順番にSCA1, SCA2と番号がつけられています。すでに40種以上が報告されていますが、遺伝子異常が見つかっていない例もたくさんあります。
- 症状:歩行時にふらついたり、転倒したりします。一見酔っ払ったように見えます。バランスを取るために足を横に開いて歩くことが見られます。言葉はもつれる、呂律が回らない感じとなります。手指の動きが悪くなり書字、ボタン掛けなどがしにくくなります。いずれの症状もゆっくりと進行します。
- 診断:親兄弟など類縁に同様の症状・疾患の人がいれば診断に近づきます。問診で家族歴を聴取し、神経学的診察で小脳失調を確認します。MRIやCTで小脳や脳幹の萎縮の確認を行います。遺伝子検査を行う場合もあります。
- 治療:根本的治療はまだありません。TRH製剤(タルチレリン(セレジスト)が失調の進行抑制に有効とされています。リハビリテーションにより歩行やバランスなどの症状改善が可能です。ロボットリハビリテーション HAL(ハル)も有効です。当院では脊髄小脳変性症に対して積極的にリハを行っています。